「終わらない毎日の終わりまで」続きの1。
でもまだ続きます。。
ご利用は計画的に、ですよね。。
「サイトウ」
「あ、ども…」
この間、妙な流れで「エーコちゃん」――サンノミヤさんと一緒に帰った。
それ以来、ときどき声をかけられる。肩パンチ付きで。
彼女が、僕が学校で口を利く、ただひとりの人だった。
「今日も購買のパンじゃん」
僕の机の上には、やきそばパンとパック牛乳。安くておなかがいっぱいになる組み合わせだ。
「あ、うん…」
「おれは弁当」サンノミヤさんは嫌そうな顔をした。「一緒に食っていいか?」
「え、」
「なんだよ嫌なのかよ」
「いや、別に…」
僕の席は窓際の真ん中より少し後ろよりにある。彼女は、近くの誰も使っていない椅子を引き寄せて座った。
僕は視線をおろして、やきそばパンのラップをはがす。
サンノミヤさんが目の前で、弁当包みを開いた。冷めたおかずの温かいにおいがした。
僕の視界には、やきそばパンと机と、サンノミヤさんの手と箸と、お弁当。
秋晴れの空は半透明で、閉めた窓からは白い日の光が温かい。
「いいな、この席」
ぽつりと、サンノミヤさんが言った。
「うん、」
「おれの席廊下のほうだからさ、さみぃんだよな」
「うん」
「代わってくれよ」
「え、」反射的に顔を上げると、サンノミヤさんは小さく笑った。「嘘だよ」
「おまえさ、エーコちゃんのなんなんだよ」
休み時間、次の授業で使う視聴覚教室に向かう廊下で、クラスの男子3人に囲まれた。僕より背の低い人も居たけれど、たいてい僕より少し背が高い。
「………」
僕はいつもどおり何も言わない。
「なんかさー、いっつも一緒にいんじゃん?」
「お前とエーコちゃんさ、付き合ってんの?」
付き合ってるとかどうとか。一緒に居るからどうとか。
だから一体なんなのだろう?
めんどくさいな、て思った。
心底。
「なぁ地蔵よぉ、なんか言えよ」
僕が何も言わないから「地蔵」と呼ばれていることは、サンノミヤさんから聞いて知っていた。
「なんでもないよ」
僕は言う。
3人が驚いてたじろいだのがよくわかった。
僕はそれを、少しだけ愉快に思う。
「サンノミヤさんと僕は、別になんでもない」
"別になんでもない"
愉快だったはずなのに、そのことばで、僕のなかの温度がすっと下がる。
鎖骨の間、少し下が、きゅぅと痛んだ。
何も言わない3人を避けて、僕は廊下を、さっきよりも早足で進む。
息苦しいわけではない。けれど、息苦しいような気がした。
いびつな穴が開いて、痛いものが漏れ出しているような。
「サイトウ」
休み時間、いつもの声で呼ばれた。僕は寝たふりをしたまま、顔を上げなかった。
「おい、サイトウ」
また呼ばれた。さっきよりも大きな声で。それでも僕は、顔を上げなかった。
「……なんだよ、」
ぽつりと、サンノミヤさんが呟いた。今まで聞いたことのない、小さな声だった。
胸の穴から、また少し痛いものが漏れ出す。――苦しい。
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