「終わらない毎日の終わりまで」続きの蛇足。
あんまりにも収拾つかなくなりそうだったので別枠にて。
おかあさんとの話も、広がりますよね。
広がるだけですが。。
主宰へ私信。
これなかった人用に出来れば公演部の内容もよろしくお願いします。
家に帰ると、母親はまだ帰ってきていなかった。僕の傘はしきりに雫を零し、母親の傘は乾いたまま、玄関で僕を迎える。
かばんだけ、玄関先において。母親の傘を持って、僕はもう一度、家を出る。
雨の日には、団地の広場も閑散としていた。冬の雨は寒いし冷たいけれど、人気をなくしてくれるのは好きだった。
吐く息が白い。
道行く人はみんな傘を持っている。いろんないろが、道に転々と咲く。
そのなかを、母親が歩いてくるのが見えた。少しだけ早足で、でも、もうどうしようもなく濡れている。
僕はそのほうに歩く。少しだけ早足で。
「あ、」
母親が、僕に気づく。足の速度が、少し遅くなった。僕は構わず、同じ速度で近づく。
あと3歩のところで立ち止まって、傘を差し出した。
「ああ、ありがとう」
母親の手が伸びて、僕から傘を受け取る。
今さらさしても遅いのに、母親は傘を開く。
ビニールに雨粒が弾かれて、ぱしぱし、音を立てる。
「風邪、引くよ」おかあさん、
最後のことばだけ、飲み込んだ。まだ、怖かった。
「そうね、」少しだけ微笑んで。
並んで、来た道を戻る。
僕はいつか、
母親のことを面と向かって、
「おかあさん」
と、
呼べるようになるのだろうか。
それがいつかはわからないけれど、そんな日が来てもいいかもな、て、思った。
時間はたぶん、まだたくさんある。
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